年収500万の給与所得控除は144万。税は実際いくら減る?

会社員には“みなし経費”=給与所得控除が自動でつく。年収500万なら控除は144万。ただし「税が144万減る」わけではない。本稿は「控除額(所得から差し引く額)」と「税額」を切り分け、年収別に“いくら減るか”を数字で示す。

本稿では①年収別の控除額早見表、②5分でわかる計算式、③前提を固定した税額軽減の目安(所得税+住民税)の3点で誤解をゼロにする。最後に、特定支出控除の使いどころと次アクションも提示する。


給与所得控除=会社員の“みなし経費”

  • 個人事業主:実費(PC・交通費など)を経費計上
  • 給与所得者:実費の代わりに給与所得控除を差し引く仕組み
    → 目的は勤務関連費の概算控除。控除額は法令で決まっている(国税庁)。

重要:控除額は「課税所得の減少額」であり、「税額の減少額」ではない。


年収別の控除額早見表(令和2年以降)

年収 控除額(課税所得の減少額) 計算式の目安
162.5万円まで 55万円 定額
162.5万超〜180万円 年収×40% − 10万円 例:170万→58万円
180万超〜360万円 年収×30% + 8万円 例:300万→98万円
360万超〜660万円 年収×20% + 44万円 例:500万→144万円
660万超〜850万円 年収×10% + 110万円 例:700万→180万円
850万円超 195万円(上限) 一律195万円

※ 計算式・上限は令和2年分以降の現行ルール(国税庁)。

具体例

  • 年収500万円:控除=500×20%+44=144万円 → 給与所得=500−144=356万円
  • 年収300万円:控除=300×30%+8=98万円 → 給与所得=300−98=202万円

税額はどれだけ減る?【前提を固定した“目安”】

前提:独身/他控除なし/所得税の基礎控除48万円を適用・速算表で算出/住民税は簡便法で一律10%(均等割等は考慮外)/復興特別所得税は除外。所得税の速算表はこちら(国税庁)。
(厳密な住民税は基礎控除43万円など、所得税とルールが異なる点あり。ここでは目安として簡便化。詳説は税制調査会資料を参照: 内閣府

年収 控除前課税所得* 控除後課税所得* 税額軽減の目安(合計) 内訳(所得税/住民税)
300万円 252万円 154万円 約17.6万円 約7.8万 / 約9.8万
400万円 352万円 228万円 約27.0万円 約14.6万 / 約12.4万
500万円 452万円 308万円 約41.0万円 約26.6万約14.4万
600万円 552万円 388万円 約49.2万円 約32.8万 / 約16.4万
700万円 652万円 472万円 約54.0万円 約36.0万 / 約18.0万

*「課税所得」=(給与収入 − 給与所得控除) − 基礎控除48万円(所得税)。所得税は速算表、住民税は10%簡便法で算出(国税庁)。
※住民税は簡便法(課税所得×10%)で試算。実務は基礎控除43万円・均等割等により差異あり。

年収500万円の内訳(目安)

  • 給与所得:500 − 144 = 356万円
  • 課税所得(所得税):356 − 48 = 308万円
  • 所得税:308万×10% − 9.75万 = 約21.1万円(速算表)(国税庁
  • 住民税(簡便):308万×10% = 約30.8万円
  • 控除が“無い”場合(比較用):課税所得452万円 → 所得税約47.6万円+住民税約45.2万円=約92.9万円
  • 軽減効果合計約41.0万円(92.9 − 51.9)

注意:実際の住民税は基礎控除など所得税とルールが異なるため誤差が出る。厳密計算はお住まいの自治体ページで要確認(内閣府)。


さらに狙える「特定支出控除」

給与所得控除を超えるレベルで職務関連の支出が発生したら、特定支出控除で上乗せ可能。要件・対象区分・上限はタックスアンサーNo.1415が一次情報(国税庁)。

  • 対象例:通勤費(会社負担超)、転居費、研修費、資格取得費、帰宅旅費(単身赴任)、図書費・衣服費・交際費合算65万円上限)など(国税庁)。
  • 判定基準:その年の給与所得控除額の1/2超えた部分が控除対象。
    :年収500万 → 給与所得控除144万 → 判定は72万。職務関連支出が80万なら、8万が追加控除(国税庁)。

よくある勘違いQ&A(30秒で解決)

Q1. 副業や複数勤務のとき、控除はどう計算?
A. すべての給与収入を合算してから給与所得控除を1回だけ適用。必要なら確定申告で精算。

Q2. 住宅ローン控除との関係は?
A. 住宅ローン控除は税額控除(税そのものを差し引く)。給与所得控除は所得控除(課税所得を減らす)。別枠で共存する。

Q3. 復興特別所得税は入ってる?
A. この記事の目安表は除外。厳密版は別表で提示すると正確(自治体サイトや国税庁を参照)。


出典・参考

  • 国税庁 No.1410 給与所得控除(令和2年以降の式・上限195万円)…リンク
  • 国税庁 No.2260 所得税の税率(速算表)リンク
  • 国税庁 No.1415 給与所得者の特定支出控除(1/2判定・65万円上限)…リンク
  • 国税庁 令和2年度 所得税の改正のあらまし(控除10万円引下げ・上限195万円)…リンク
  • 内閣府 税制調査会資料(個人住民税:基礎控除43万円、税率10%(6%+4%))…リンク
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