30秒サマリー
- 社会保険は「健康・介護・年金・雇用・労災」の5本柱。
- 会社員が負担するのは労災以外の4つ(労災は会社が全額)。
- 「何が起きたとき、どれくらい守ってくれるか」を知ると、手取りの見え方が変わる。
社会保険の全体像(まずは地図)
制度 |
何を守る?(一言で) |
会社員の保険料 |
会社の保険料 |
代表的な給付 |
健康保険 |
医療費を3割に抑えるサブスク |
約5% |
約5% |
医療7割負担・高額療養費・傷病手当金・出産育児一時金 |
介護保険 |
40歳以上の介護サービス自己負担を原則1割に |
約0.9% |
約0.9% |
居宅/施設サービス・福祉用具・住宅改修 |
厚生年金 |
老後・障害・遺族の生活保障 |
9.15% |
9.15% |
老齢/障害/遺族年金(国民年金を含む2階建て) |
雇用保険 |
失業・育児・介護の収入減をカバー |
0.6% |
0.95% |
失業給付・再就職手当・教育訓練・育児/介護休業給付 |
労災保険 |
仕事が原因のケガ/病気/死亡を補償 |
0% |
0.25%〜8.8% |
医療費無料・休業補償(80%)・障害/遺族・介護補償 |
※健康・介護は組合/地域で、雇用・労災は事業区分で料率が変わります。
なぜ労災だけ社員負担ゼロ?
業務上の災害は事業主の責任という考え方。安全配慮義務も会社にあるため、保険料は会社が全額負担です。
制度ごとの“ここだけ押さえる”
1) 健康保険:医療費3割+万一の収入減もカバー
- 医療費:自己負担原則3割(69歳以下)。上限超えは高額療養費で払い戻し。
- 傷病手当金:業務外の病気やケガで働けないときの生活保障。
待機3日、4日目から最長1年6か月
支給額の目安:標準報酬月額30万円 → 日額 約6,667円(= 30万÷30×2/3)
- 出産育児一時金:50万円/人(2023年4月改定)
- 月給30万円の目安負担:会社員分 約1.5万円(組合・地域により変動)
申請の目安チェック
- 1か月の医療費が高額になった
- 病気やケガで4日以上連続で働けない
- 出産予定/出産した
2) 介護保険(40~64歳で拠出開始)
- 要介護認定を受けると、介護サービスを原則1割負担(所得で2~3割になることも)。
- 居宅・施設・地域密着サービス、福祉用具、住宅改修など幅広くカバー。
- 月給30万円・40歳以上の目安負担:会社員分 約2,385円
申請の目安チェック
- 家族/本人に日常生活の介助が必要になった
- 住宅の手すり・段差解消など改修が必要
3) 厚生年金:老後だけじゃない“働けない”も守る
- 現役が高齢者を支える世代間扶養+自分の記録に応じた給付。
- 老齢(65歳~)、障害、遺族まで一気通貫で守る。
- 負担:会社員9.15%+会社9.15%
- 月給30万円の目安負担:会社員分 約2.7万円
40年加入・月給30万円程度の給付イメージ:
基礎年金 約6.5万円/月 + 厚生年金 約9万円/月 = 計 約15.5万円/月
申請の目安チェック
- 障害状態になった(初診の年金加入状況が重要)
- 世帯主が亡くなった
4) 雇用保険:失業・育児・介護の“収入が切れる”をつなぐ
- 失業給付(基本手当):離職前賃金の50~80%を90~330日(年齢/勤続/離職理由で変動)。
- 再就職手当:早期就職で一時金。
- 教育訓練給付:対象講座の受講料を一部補助。
- 育児休業給付:育休開始~6か月は67%、以降50%。
- 月給30万円の目安負担:会社員分 1,800円(0.6%)
申請の目安チェック
- 会社都合/自己都合で離職した
- 育児休業・介護休業を取得する
- 公的対象の資格/講座を受講する
5) 労災保険:仕事が原因なら“医療費ゼロ&高い補償”
- 療養補償給付:医療費全額無料
- 休業補償給付:80%(60%+特別20%)
- 障害/遺族/介護補償:重度なら終身年金も
- 会社員の負担は0円(全額会社負担)。
日額目安(休業)例:月給30万円 → 約8,000円/日
申請の目安チェック
- 仕事中・通勤中のケガ/病気(通勤災害も対象)
- 後遺障害が残った/家族が労災で亡くなった
「手取り」の見方が変わる小ワザ
- “何に備えているか”をひと言で言えるようにする(医療、介護、老後/障害/遺族、失業、労災)。
- 給与明細の保険料は“いざ”の給付に変換して考える(例:傷病手当金・育休給付・高額療養費)。
- ライフイベント(出産・育休・病気・転職・死亡)に合わせて使える給付をチェックする。
まとめ
社会保険は、医療・介護・老後/障害/遺族・失業・労災の5方向から生活を守る安全網です。
「なんとなく引かれているお金」ではなく、“いつ・どれだけ”助かるかをイメージすると、納得感がグッと高まります。いざという時に取りこぼさないよう、各制度の申請トリガー(チェック項目)だけでもブックマークしておきましょう。
※本記事の料率・給付は概算です。健康保険組合・都道府県・事業区分・所得状況で変わるため、実務利用時は最新の一次情報をご確認ください。